旅を栖とするフォトグラファーの濱津和貴さんが、行く先々でステテコ製品を堪能する連載「旅するステテコ」。第 3回は、石川啄木や宮沢賢治にゆかりの深いまち、岩手県「盛岡市」を訪れました。
Traveler : Waki Hamatsu
Photography : Waki Hamatsu
Edit : steteco.com
旅の目的は書店「BOOKNERD(ブックナード)」で開催される個展のため。濱津さんは日々の撮影の合間を縫っ て、近作の写真集『summer vacation』を基調とした個展を各地で行っており、念願の岩手県での初開催となりました。
歩道に咲く紫陽花と中津川
北上川、中津川、雫石川の3つの川が流れる自然豊かなまち盛岡。水辺の公園や橋も多く、梅雨の時季はみずみずしい新緑に彩られます。盛岡駅へ到着した濱津さん、今夜泊まる宿へ向かって歩いていると、あちこちに咲く大きな紫陽花が迎えてくれました。
モモンガパンツがお似合いの濱津さん
今回の旅へ「モモンガパンツ(ハスカップカラー)」を連れて行ってくれた濱津さん。涼しくて動きやすく大満足だったとのこと。素敵なスタイリングをありがとうございます。盛岡に来るとよく泊まるというホテル近くの昭和レトロな建物の前で記念写真。
BOOKNERDでの展示の様子
濱津さんは各地を巡って『summer vacation』の個展を開催する際、訪れる土地の風土や書店のイメージに合わせて毎回インスタレーションを変えているのだそう。BOOKNERDはサンフランシスコ・ベイエリアのストリートのような雰囲気に。
楽しんでもらえるかどうかドキドキしていたものの、なるべくお店に立たせてもらうようにし、地元の本好きのお客さんとの交流や、県外から駆けつけてくれた旧友との再会など、うれしい反響に恵まれました。
老いも若きも深い味わいに包まれる盛岡の夜
濱津さんの旅では「夜の散歩」も大切です。イタリアンレストランの「Due Mani(ドゥエマーニ)」で旬のホヤとオレンジワインのフレッシュな関係に魅せられ、「BAR バロン」ではジェントルなマスターが作るオリジナルのカクテル「シークレット バイロン」に熱い吐息を漏らす。旅先でのこうした体当たりの交流が、濱津さんの写真にあたたかい体温をもたらすのかもしれません。
店内にはレコードの音が流れます
翌日もBOOKNERDへ。店の奥のカウンターでレコードに埋もれているのは店主の早坂大輔さん。数年前、東京神楽坂にある生活道具店「jokogumo」が発行している『行ってみたいトコロ盛岡』という冊子の撮影で知り合い、盛岡はもちろんアメリカのカルチャーに精通する早坂さんとの会話はとても楽しかったそうです。 Instagram : @booknerdmorioka
直利庵の店内を飾る作品たち
この日は東京から駆けつけてくれた友人を連れ立って、明治17年創業の老舗のそば屋さん「直利庵(ちょくりあん)」へ。井戸から汲み上げたきれいな盛岡の水で作られるそばの美味しさもさることながら、濱津さんが気になったのは店内に飾られた数々の絵画。
調べてみると、「直利庵」の女将さんは数年前まで30年にわたって画廊も営まれていて、学芸員の資格をとりながら才能ある新人に発表の場を提供してサポートされていたのだそう。
滞在している間に濱津さんが節々に感じたという「まちの文化度の高さ」はきっと、こうした方々の芸術への思いが受け継がれているからなのでしょう。
盛岡城跡公園近くの夕刻
盛岡は、歴史と文化とが人の手を離れずに在るまち。おだやかに時は流れ、多忙の日々から訪れれば時間が止まって見え、行き詰まって停滞した日々から訪れれば、そっと再び背中を押してくれる。
後日、濱津さんから届いた写真を眺めていると……まさにサマーバケーションにぴったりのまちに思えてきました。モモンガパンツにとってもきっと思い出深い旅となったことでしょう。次回もどうぞお楽しみに。
濱津和貴さん
東京在住のフォトグラファー。日常にたたずむ美しさをテーマに、人の営みとそこから生まれる光景を撮り続ける。近年、ユニット「kinhiji」を結成。写真集『summer vacation』ほか。
Instagram : @wakyhama / @kinhiji_