旅を栖とするフォトグラファーの濱津和貴さんが、いく先々でステテコ製品を堪能する連載「旅するステテコ」。第6回は、旅と暮らしと仕事の起点である東京の「神楽坂」と「吉祥寺」を訪れました。
Traveler : Waki Hamatsu
Photography : Waki Hamatsu - cover, kagurazaka / Soya Oikawa - kichijoji
Edit : steteco.com
異国情緒あふれる大人の街として人気の神楽坂。大正時代には「山手銀座」と称されるほどの花街だったこともあり、一流芸者との粋な遊びに興じた多くの文化人に愛された、懐深い街でもあります。
そんな神楽坂の近くに濱津さんが越してきたのは、留学を終えて帰国した15年ほど前。以来すっかり街に馴染んでしまい、今でも食材や日用品の買い出しから、旅先に持っていくお土産さがしまで、何かと足を運んでいるのだそうです。
この日は界隈に住む仲良したちが集まる「フリーランスの会」が開かれていました。メンバーが運営する撮影スタジオ・ギャラリー「Le Tiroir(ル・ティロワ)」を会場に、各々が好きな料理やお酒を持ち寄るスタイル。みんな近所に住んでいるフリーランス仲間ということもあって、仕事や暮らしのことなどを相談し合える、貴重な情報交換の場なのだとか。
おいしそうな料理が並ぶなか、濱津さんは盛岡の実家のお母さんが送ってくれたシャインマスカットと紫大根のサラダに、麻婆豆腐、さらに9月のベイエリアへの旅で訪れた「Picchetti Winery(ピケッティ・ワイナリー)」で見つけたジンファンデルというカリフォルニア産ぶどうで作られたスパークリング・ワインを持参。
そしてなんと今回、濱津さんが着てくれたステテコドットコムオリジナルのはんてん(宮田織物 × Saana ja Olli)を、メンバーのみなさんが試着してくださいました!
左から順に、スタジオ・ギャラリー「Le Tiroir(ル・ティロワ)」の小宮山裕介さんとわだりかさん。フォトグラファーのご夫婦です。みんな大好きなスペイン料理店「¡ÁNIMO!(アニモ)」の多戸綾さん。いつもおいしい料理を振る舞ってくれる綾さんに、たまには食べる側に混ざってもらいたいと企てたのが、会の始まりだそうです。続いて濱津さんもよく器を購入するという生活道具の店「jokogumo(よこぐも)」店主の小池梨江さん。最高のポージングをしてくださった編集ライターの橋本幸子さん。
見事に着こなしてくださったみなさん、ご協力ありがとうございます!
数日後、「ぜひ見せたい場所が」と誘われて向かったのは、吉祥寺にある「Prism Lab. KICHIJOJI」という写真ラボ。
JR吉祥寺駅にほど近いマンションの角にある「Prism Lab. KICHIJOJI」は、西村康さん、古屋岳史さん、前端修さんの3名によって2021年の春に設立。プロフェッショナルのためのフィルムの現像とプリント、スキャンデータ作成はもちろん、誰でも気軽に立ち寄れて、写真に関するどんな相談にも乗ってくれるオープンなお店でもあります。
現像されたネガをチェックする濱津さん
この日は、次の展示の準備でお願いしたいプリントがあっての来店でした。でも一言でプリントといってもさまざまあり、撮影したのはデジタルかフィルムか、使うのはウェブメディアか紙メディアか、サイズや枚数はどのくらいかなどの内容によって、細かいコミュニケーションが必要。
またイメージするプリントのカラーや質感をすべて言葉だけで伝えるのは簡単ではなく、濱津さんのようなフォトグラファーにとって、言い表すことのできない感覚的なところを共有できるラボの存在はとても重要なのです。
終始、仲良さそうに談笑し続けた濱津さんと西村さん。それもそのはずで、2人は15年来の付き合いだそうで、濱津さんが日本に帰国して間もないころ、自分に合ったラボを探していたときに、たまたま友人に教えてもらってたどり着いたのが西村さんだったのだそう。とてもラッキーだったと言います。
そんなこともあってか、この日も談笑がまったく止みません(笑)。写真のことから社会情勢のことまで、相談したり受けたり、持ちつ持たれつ。
やがて取材も終わり、ラボを後にして駅に向かう途中、「楽しそうでしたね」と声をかけると、「話が長いからいつも長居してしまう」と嬉しそうに笑う濱津さんが印象的でした。
さて今回は、はんてん姿で東京を駆け回ってくれた濱津さん。春にはじまったこの「旅するステテコ」の連載で、ステテコはもちろん、カンフーパンツ、モモンガパンツ、バルーンブラウス、ちぢみデニムなどを連れ、日本各地から海を渡ってアメリカデビューまで果たすことができ、ステテコドットコムとしても大変ありがたい1年となりました。
来年はどんなところを旅するのか、これからもどうぞご期待ください。
濱津 和貴さん
東京在住のフォトグラファー。日常にたたずむ美しさをテーマに、人の営みとそこから生まれる光景を撮り続ける。日本の知恵袋としての食文化を世に伝えるユニット「kinhiji(きんひじ)」としても活動中。写真集『summer vacation』ほか。
Instagram : @wakyhama / @kinhiji_