今月の絵『紙ヒコーキ』 by Ryu Itadani
思い出の紙ヒコーキ(月刊ステテコ5月号)
気がつけば、暮らしの隅々にスマートな電話やAI機能がついた家電製品がどんどん浸透し、何かとデジタル時代の恩恵を受けることが増えました。公私、昼夜を問わず、やりたいことの半分くらい、時には丸ごと全部を代行してくれることもあり、日々の家事や仕事や遊びに、大助かりです。
でも、そんなテクノロジーが担ってくれることが増える一方で「ものに直接触ること」や「失敗から学んで調整する力」といった「自分が主体」となる行為もまた、大切です。
そこで今月は「紙ヒコーキ」をテーマにしてみました。
たとえば「遊び」には道具が要るものとそうでないものがありますが、遊びの中に「自分でつくる」が含まれている「お絵かき」や「ねんど遊び」、「折り紙」などはいつの時代も人気です。中でも「紙ヒコーキ」は一枚の紙が飛行機になって実際に「飛ぶ」という群を抜いた楽しさがあります。よく飛んでくれた時のあの「すい~~」という数秒間は、一度味わったら忘れることができません。
そんな紙ヒコーキには、一般的にはコピー用紙や新聞のチラシ、折り紙などが用いられますが、上級者になってくると作りが複雑になって重なりが増えるので、薄くて丈夫なバガス紙というサトウキビの搾りかすから作られる専用紙が好まれるのだそう。
速くまっすぐ飛んだり、ぐるんと宙返りしたり、長い滞空時間で遠くに飛んだり、デザインによって性能はさまざま。左右が同じバランスになるように、角をそろえて折ることや、翼のちょっとした角度も大切です。また小さいながらも飛び出す時のスピードに耐えられるように三角形をしていたり、飛行機を飛ばす空気の力の「揚力(ようりょく)」の存在に気がついたりと、まさに学びの宝庫。
さらにエコロジーの観点から見れば「お絵かきに使った紙」を再利用するのもよさそうです。何が描かれていても飛行に影響はないですし、むしろ思わぬ現れ方をして素敵かもしれません。
実際に自分の頭と手で作ることで愛着も生まれ、遊び終わってもなかなか捨てられない気持ちを感じた時、その手のひらに乗っているのは「思い出の紙ヒコーキ」です。今度の休日はさわやかに風がそよぐ初夏の公園で、紙ヒコーキ遊び。いかがでしょうか。