ミツバチ(月刊ステテコ5月号)

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@Ryu Itadani
@Ryu Itadani

今月の絵『ミツバチ』 by Ryu Itadani

ミツバチ

 朗らかな春の陽気のなか散歩に出かけると、道端や花壇などに咲く花々に、つい目を奪われることがあります。立ち止まってしばらく眺めていたら、一匹の可愛らしいミツバチが飛んできました。

 古来、ミツバチは人類にとって身近な生き物でしたが、その理由はハチミツやミツロウだけではありません。実はミツバチの持つおどろくべき生態によって、私たちの暮らしは支えられ続けてきたのです。

 多くの鳥や昆虫と同じように、自然の中をミツバチが飛び回っているのは食べ物を得るため。つまり蜜や花粉を集めるためですが、花から花へと飛び回るミツバチは、おのずと体に付着した花粉を運ぶことで植物の「受粉」を助けており、その行為から「ポリネーター(pollinator = 花粉媒介者)」と呼ばれます。

 「媒介」と言ってもなかなかピンと来ませんが、要するに、2つの間に立つ「つなぎ役」です。種子植物というのは、おしべの花粉をめしべが受粉しないと種が育ちませんから、花粉を運んでくれるポリネーターの存在はとても重要なのですね。もちろん鳥や昆虫の中には、さまざまなポリネーターがいるのですが、ミツバチの貢献度には遠く及びません。

 ではなぜミツバチは、そんなに効率よく花粉を運ぶことができるのでしょうか。その理由のひとつが「8の字ダンス」と呼ばれるコミュニケーション能力。たとえば一匹のミツバチが良質な蜜源を見つけたとします。彼女は「うふふ。ここは私だけの秘密の場所にしておこう」などと独占的なことは一切考えず、巣に帰ると仲間たちにその場所の情報を「ダンス」で教えてあげます。

 どのように教えるのか。巣の中で仲間に囲まれながら、彼女はまるで「8の字」を描くように動き回ります。その中でお尻の振りや、立てる羽音の強弱、動く向きとその長さを織り交ぜながら、蜜源への方向や距離を伝達するという、すごい知性です。

 仲間たちは彼女のダンスから得た情報のおかげで、どの方向にどのくらい飛べば良いかを知り、安心して巣から飛び出してい行ける。各々がそんな能力を持つミツバチ集団ですから、とても効率よく花が咲いている場所を共有できるというわけですね。

 そんなミツバチが受粉を助けている植物はたくさんあり、私たちに身近なリンゴやイチゴといったさまざまな果物、キャベツやタマネギなどの野菜あれこれ、さらに大豆やコーヒー、そしてステテコドットコムのものづくりに欠かせない「コットン」もそうです。

 ミツバチが花粉を運んでくれたおかげで収穫できたコットンが、一本ずつの糸となり、一枚ずつの生地となり、縫い合わされてステテコとなる。そんなストーリーを想像すると、わたしたちが手にする製品の一つひとつに、ミツバチの貢献から始まる長い時間が流れているということがわかります。

 素材のルーツを辿ることで見えてくる自然界のおもしろさを、ステテコドットコムはこれからも発見していきたいと思います。

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