絶滅の危惧(月刊ステテコ9月・10月合併号)

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@Ryu Itadani
@Ryu Itadani

今月の絵『フクロオオカミ』 by Ryu Itadani

絶滅の危惧

 10月となり、本格的な秋を感じられるようになってきました。

 それにしても過夏もとても暑く、突然の雷雨や熱中症への注意喚起など、異常気象への心配はすっかり日常化。日本をはじめ世界中の都市でさまざまな暑さ対策がなされていましたが、そもそものことをいえば、地球温暖化は他でもないヒトの活動が大きな原因のひとつ。

 そこで今回の「月刊ステテコ 9月・10月合併号」では、ヒトの営みが地球全体へ及ぼす影響と向き合うべく「絶滅危惧種」について考えてみました。

 たとえばオーストラリアでは、毎年9月7日が「絶滅危惧種の日」と定められています。

 海がきれいな南の島という、おだやかなイメージがあるオーストラリアですが、実は現在2,000種もの野生生物が絶滅の危機にあり、リストには私たちに馴染み深いコアラの名も。

 その原因は大航海時代を経て、オーストラリアにやってきたヒトによって、本来生息していなかった生物が持ち込まれたことによる「生態系バランス」の変化、街や農地づくりのための森林伐採、地球温暖化に伴う大きな自然火災による「生息地の減少」などがあげられます。

 古来オーストラリアには固有種(そこにだけ生息する生き物)が多かったのですが、それは生存競争に強くないものたちにとって最後の楽園でもあったのです。

 というのも、もともとオーストラリア大陸は南半球にドンっと存在した「ゴンドワナ」という超大陸の一部でした。アフリカや南アメリカ、南極などもそうです。それらが数千万年かけて少しずつ分裂して移動していく間の生存競争に追われるようにしてやってきたのが、現在オーストラリアに生息する固有種たちの祖先だといわれています。

 子どもをお腹の袋の中で育てるカンガルーやコアラ、哺乳類でありながら卵を産むカモノハシといっためずらしい生き物たちは、そのようにして海に隔てられ、他の大陸の影響を受けない環境で独自に進化してきたのですが、その「環境」をヒトが崩してしまっているのです。

 「絶滅危惧種の日」に話を戻せば、同日はオーストラリアのタスマニア州に生息していた有袋類「フクロオオカミ(タスマニア・タイガー)」が1936年の9月7日を最後に絶滅したことに由来し、同じような運命に直面する動植物にスポットをあてて、自然環境の回復に向けた活動を促す目的で制定されました。

 日本でも、イリオモテヤマネコやラッコやジュゴンなど、たくさんの動植物が絶滅の危機にあります。長い時の流れのなかで、ある生物の種類が絶滅することはひとつの自然現象ですが、ヒトが生物環境に与えてきた影響は、それとは別のものです。

 近代に入り、ヒトは地球上のどの動物よりも速く走り、どの鳥よりも高く空を飛べるようになりました。でもそんなすぐれた知性を持つはずのヒトが、過剰に山を崩し、樹を倒し、海を埋め、街を造り、二酸化炭素を排出し、地球を温暖化させ、野生の動植物界に大きなダメージを与えてしまっています。

 ステテコドットコムはそんな事実と向き合いながら、天然素材の力を借りて、ほどよく夏を涼しく、ほどよく冬を暖かく、今より少しでも自然と調和のとれた未来へ向かって、ものづくり文化を守っていきたいと思います。

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