― この度ラクダインナーのモニターを務めてくださった陶芸家の前野達郎さんと、奥さまの奈々さんに、器づくりについてお話を聞いてみました ―
江ノ島にもほど近いスタジオを訪ねると、カジュアルにラクダインナーを着こなした達郎さんと奈々さんが迎えてくれました。見慣れない不思議な道具がたくさん並ぶスタジオ内はとにかく整理整頓が行き届いていてきれいな印象。達郎さんはここで奈々さんの助けを借りながら、素材作りから焼成まですべての作業を行っているのだそう。
達郎さんが多摩美術大学の入試試験のときに描いた作品
達郎さんは、そもそもどのようにして陶芸家になられたのですか?
達郎さん もともと地元の兵庫県で、割と本気でバンド活動をやりながら音楽大学を目指していたんですけど、友達のひとりが美術大学に行くって話を聞いているうちに自分も興味が湧いてきて、試しに芸術大学の工芸コースの夏期講習に行ってみたんです。そしたらすごくおもしろそうに思えて、結局そのまま美術の世界に進んで陶芸を学びました。なので、もともと目指していたというよりも、いくつかの偶然もあって流れのなかで決まっていった感じですね。
軽快な身のこなしでリズム良く作業する達郎さん。サーフィンが趣味だというのも納得です
大学を卒業してからはすぐに陶芸家として活動を?
達郎さん いえ、卒業後はいったん陶芸から離れて、アーティストの展示会の設営をするような会社に就職しようかなって思ってたんですけど、結局ずっとバイトしかしていませんでした(笑)。でもいろんなアーティストのサポートをしてるうちに、やっぱり自分もやりたいなって思ってきて。そこからいろいろあってデンマークに行くことになって……。
デンマークへの扉を開いてくれた「KIM HOLM」さんの展示会資料
どんな成り行きでデンマークに?
達郎さん たまたま当時住んでいたところの近くにあった工芸サロンで、デンマーク人の「KIM HOLM(キム・ホルム)」さんという陶芸家に出会ったのがきっかけです。その方は「Aarhus(オーフス)」というデンマークの第2の都市にある芸術大学で教授をされてて、僕みたいな若手のアーティストを支援してくれるデンマークの文化制度や関係施設をいくつか教えてもらって、実際に現地に行ってみたりしながらチャンスが広がっていった感じです。
若手陶芸家のための支援プロジェクト「PROJECT NETWORK 08/09」の冊子に掲載された達郎さんの作品
その頃にはもう自分のスタイルを持っていたのでしょうか?
達郎さん 向こうに行く前は全然なかったです。デンマークではアーティスト・イン・レジデンスという形で6週間の滞在中に自分で考えて制作するというものだったんですけど、僕は「Utsuwa A to Z」というコンセプトでAからZまでのアルファベットから連想する器のデザインに取り組んで、それが後にアップデートを重ねて今のようなラインナップになっています。
もともと透明水彩が好きだったという達郎さんならではの透明感のある色合い
一度見たら忘れられないような明るい色と配色も印象的です。
達郎さん もともと色を扱うのが好きだったんです。美術大学の受験に透明水彩の実技試験があるんですけど、予備校に通っていた頃から着彩や平面構成なんかはすごく楽しくやれてたなって覚えています。だから「デンマークに行ったからこういう色使いに?」って聞かれることがあるんですが、それ以前からだったような気がします。色って組み合わせ次第ですごくきつい色になったりもしますけど、この色とこの色を合わせるといいとか、感覚的なところかもしれないですね。
器の底の高台に撥水剤を塗る奈々さん。淡々・黙々系の作業も得意です
では暮らしについて少し教えてください。前野さんの好きな生活空間はどんなイメージですか?
達郎さん 僕は物が少ない暮らしのほうが好きです。そもそも物じたいにまったく執着が無いんですよ。収納できるスペースには限りがあるので、一個増やすなら一個減らしたいっていつも思っています。だからなるべく物は増やさない……いや増やさないというか、どんどん増えていくってことは、逆に言うと「要らない物も増える」ってことですし、必要最低限があれば充分って思っています。
自宅ではよく花器にドライフラワーを飾るのだそう
実際にお二人は暮らしの中で器たちをどう使われているのですか?
奈々さん 毎日使うマグカップのほかに、小さいサイズのボウルはお鍋など、テーブルの真ん中に温かいものがあるときによそって食べる用によく使っていて、Lサイズのプレートだと、ゆっくり朝ご飯が食べられるときに、目玉焼きとサラダとか、ソーセージを乗せたりしてワンプレートで使ったりして使い分けていますよ。
「泥漿(でいしょうという粘土と水を混ぜた素材)を石膏型に流し込んで水分を吸わせ、かつ遠心力で均一の厚さにしています」と説明してくれている奈々さん
お客さんからよく聞かれることなどは?
奈々さん 「電子レンジは使えますか?」という質問は多いですね。食器用の粘土を使っているのでまったくダメってことではないんですけど、ヒビのきっかけみたいなところに水が溜まると、その水が膨張して割れることがあるのでお勧めはしていないです。食洗機は大丈夫。磁器ってすごく固く焼きしまっているんですよ。
達郎さん あとは「こういうサイズを作って欲しい」っていうリクエストもよくいただくので、お応えできるものを作ってきた結果、少しずつ種類が増えてきました。でもそうして増えたとしても、日常的に使いやすいようにデザインした定番のひとつとしてです。できる限り一過性じゃなくて、長く使ってもらえるようなものを作るように心がけています。
さっきおっしゃっていた「必要なものだけ身の回りにあれば充分」という話にもつながる気がします。定番品ということは、もうずっとデザインは変えないのですか?
達郎さん 大きく変わらないですが、よりよくなるように少しだけアップデートすることはありますよ。たとえば高台(器の底についた台)をもう1~2ミリ高くしようとか。使いやすさ、デザイン、見た目の問題でもあるんですけどね。
天井近くのスペースに乾燥させる器を並べている達郎さん。空間は無駄なく利用します
最後にラクダのお話も。今日はラクダインナーを着ながら作業をしてくださいましたが、感想としてはいかがでしたか?
奈々さん 私はだいたい気温が20℃を切ると寒く感じるのですが、今ぐらいの時季(11月初旬)から着るにはちょうど良いと思います。それに椅子に座って作業したり、水を使ったりするときも、袖口のリブがしっかりしてるので腕まくりしやすいですし、サイズ感も真冬になったら中にもう一枚、長袖を着たりできる余裕があって良いですね。
達郎さんは趣味のサーフィンの後で体をあたためるときにもぜひ着てみてくださいね。
達郎さん そうですね。トップスはボタンの付け方とかもしっかりしていて丁寧ですし、本当に動きやすくて快適です。ここ最近はスキーにも行くようになったので、今度インナーで着て行ってみようかな……。それに値段もすごく親切ですよね(笑)。
それは良かったです。今回はご協力ありがとうございました!
達郎さん・奈々さん ありがとうございました。
「飴とライラック」のマグカップ
前野達郎さんの器はカップでもボウルでもお皿でも、とにかく「安心感」が魅力です。それは料理をよそったり、飲み物を注いで飲んだりするときだけでなく、洗い物をしている最中や、棚に出し入れするときなどにも確かに感じられる「持ち心地の良さ」です。加えてこの独特の色合いのきれいさ。すごくおすすめですよ。
さて、今回の「はたらくラクダ」はいかがでしたでしょうか。あたたかくて清潔、動きやすくてムレにくい「メリノウール100%の洗濯機でも洗えるラクダインナー」は、お家でのリラックスウェアとしてはもちろん、お仕事のときに着るインナーとしてもとても優秀です。ぜひみなさんも、ラクダインナーのある暮らしをお楽しみくださいね。
前野達郎さん プロフィール
陶芸家。兵庫県生まれ。多摩美術大学工芸学科を卒業後、2009年にデンマークへ渡り陶芸にまつわる研究・制作を経て2010年より湘南・茅ヶ崎市にプライベートスタジオをオープン。
イベントへの出店や日々の活動の詳細はお二人のインスタグラムをご確認ください。
前野達郎さん:@tatsuromaeno
前野奈々さん:@nana_maeno