

今月の絵『電報』 by Ryu Itadani
卒業式と祝電
3月は新しい旅立ちの門出を祝う卒業式シーズン。厳かな雰囲気の中「卒業生入場!」に始まり、校歌が歌われ、卒業証書が授与され、校長先生の式辞、来賓の祝辞に続いて「祝電」が紹介されます。
「電報」は学校や企業などでの式典をはじめ、冠婚葬祭などさまざまなシーンに利用されるサービスですが、実は郵便サービスよりも先に東京・横浜間の緊急連絡用として1869年に始り、1875年には全国で利用できるようになりました。
また戦前はひらがなよりもカタカナが広く使われ、1文字ごとの料金体系のため、なるべく少ない文字数で内容を伝えるユニークな「カタカナ電文」もたくさん生まれています。
大学の合格を知らせる「サクラサク」や、送金を求める「カネオクレタノム」などが有名ですね。
利用数のピークは東京オリンピック開催を間近に控えた1963年の約9400万通。郵便局の電報用紙から依頼するほか「赤電話」と呼ばれる公衆電話から電報電話局にかけて、その電話口で直接送りたい内容を伝えます。ところが電話の場合、話者の発音のくせや、周囲の騒音などによって正しく聞き取られず、間違った電文が送られてしまうということもしばしば。
「ステテコ送れ」が「ステレオ送れ」に間違えられたり、あるいは「捨てておくれ」と勘違いされて、預けていたものが捨てられてしまった、ということも起こり得たわけです。
そんな間違いを防ぐために用いられていたのが「通話表」でした。あいうえおの五十音や数字などを「朝日のア」「いろはのイ」「上野のウ」……というふうに1字ずつ規則にして表に定めたものです。
その通話表を使って先の例を表すと、
「すずめのス、手紙のテ、手紙のテ、子供のコ、大阪のオ、クラブのク、れんげのレ」となります。
本来は海や空など、電波が不安定な環境での無線交信のために設けられた規則なのですが、電話帳にも掲載されて一般の電報にも広く利用されていました。欧米にもアルファベットの通話表(フォネティックコード)があります。
携帯電話やインターネットの普及にともなって、電報を利用する人の数は年々減少しているそうですが、メッセージが形に残るという魅力は色あせません。手紙も形に残るけれどちょっと重すぎる、かといってメールでは軽すぎる。そんなとき、やはり電報はありがたいサービスです。日々たくさんのメッセージが飛び交っては埋もれていく今日だからこそ、形に残るものも大切にしていきたいですよね。
電報ほど手軽ではありませんが、ステテコドットコムにも「メッセージステテコ」や「心もあったかインナー」という、メッセージを形に残せるアイテムがありますので、ぜひお試しいただければ幸いです。
それではみなさま、健やかな3月をお過ごしください。
*この絵はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。